自分に離婚原因があっても離婚できる場合

夫婦関係が破綻しているなら離婚を言い出してもOK

 

有責配偶者 というのは、かんたんに言ってしまえば、夫婦のどちらかで浮気をした方、暴力をふるった方のことです。

 

自分に離婚の原因があるのが、有責配偶者ですよね。

 

有責配偶者の方から離婚 を言い出して離婚できるのでしょうか?

もし、どうしても別れたい、というなら、別居を長期間しているなどの条件があれば、離婚することもできたりします。

 

有責配偶者でも離婚したい!という場合には婚姻関係が破綻しているかどうかがポイントになります。

つい、数十年前までは「自分が不倫や浮気しておいて、離婚の主張ができない」と言われていました。

 

確かにそういう最高裁判所の判例も出ていたので、間違いではなかったんです。

 

でも、時代が変って、平成になってからは、「離婚原因が自分にあったから離婚すらできなかったら、仲が悪い夫婦でも離婚できないのはおかしい」という風潮になってきました。

 

ここ最近では、裁判所は「破綻主義」をとっていて、「仲が悪いなら条件があれば離婚させる」ようになってきています。

 

 

有責配偶者でも離婚したいならできる破綻主義とは

有責配偶者との離婚

 

浮気とか暴力って、夫婦関係がおかしくなるきっかけのようなものなのですよね。

 

夫婦関係の破綻 に責任のある配偶者、離婚原因を作った人ということです。

 

この夫婦関係の破綻原因に、主に責任がある者のことを「有責配偶者」、破綻の原因となった事実を「有責事由」と呼んでいます。

有責配偶者の暴力

 

たとえば、暴力や虐待が原因で夫婦関係が破綻した場合には、暴行等をした方が、「有責配偶者」。

 

暴行等が「有責事由」ということなんですね。

 

ふつうに考えると、悪いことをした人から「離婚」を言い出すなんて、おかしい気がしますね。

確かに、有責配偶者が「離婚をしたい」というのは虫が良すぎる感じを受けますよね。

 

だからと言って、夫婦関係がめちゃめちゃなのに意地になって離婚を拒絶しているっていうのもおかしいんじゃないの?っていうところに『破綻主義』という考え方を取り入れているんですね。

有責配偶者が「離婚をしたい」と言っているのに、意地になって拒絶しているいうのは、有責事由として浮気などの不貞以外にはあまり考えられませんよね。

 

DVで暴力をふるっていたり、酒乱だったりしたら有責配偶者でない方は逃げたくなるでしょうから。

 

でも、ほんの数十年前の1987年(昭和62年)までは、裁判や調停になったとしても、暴力をした方や浮気をした方の有責配偶者からの離婚請求は相手方にとってあまりに理不尽であるとして認められてこなかったのです。

 

それまでの最高裁判所が出した判決は、一貫して離婚原因を作った有責配偶者からなされた離婚請求を認めなかったのです。

 

有責配偶者からの離婚訴訟が認められていなかったんですね。

 

となると、たとえば、浮気した夫(妻)が浮気相手と結婚したいから、と妻(夫)に離婚を申し入れたとして、どうなっていたかというと、、、

 

今までは

 

有責配偶者が離婚を言い出す

   

妻(夫)が離婚を受け入れてくれない

   

協議離婚「不成立」

   

家庭裁判所での調停も「不成立」になる

   

それでも離婚したい!という夫(妻)側が、離婚訴訟を起こす

   

「離婚は認められない」

 

ということになっていました。

 

離婚原因を作った方は裁判までやっても離婚できなかったんです。

 

でも、現実には有責配偶者からの離婚請求を原則として認めないとしたところで、破綻した夫婦関係が修復できなければ、根本的な問題解決にはならない場合がほとんどだったわけです。

 

最近の有責配偶者からの離婚請求の傾向

 

最近では、夫婦関係が修復できないなら、夫婦のどちらかに責任があるかないかを追求して離婚が長引くより、離婚を認めた方がお互いの将来のためにいい、という考え方に変わってきたんですね。

 

これが、いわゆる 破綻主義 っていう立場です。

 

大まかな条件として

  • 長年にわたって別居生活が続いて
  • 夫婦としての実態がなく
  • 婚姻関係が破綻していて修復が無理

とみなされるのであれば、 有責配偶者からの離婚も認めよう 、という考え方に少しずつかわってきています。

 

今現在の裁判例では次にあげるような事情を全体的に考慮して、夫婦仲の破綻に原因のある方からの離婚請求が認められる場合がありますね。

 

  1. 別居期間が相当の長期間(6〜10年くらい)にあること
  2. 未成年の子(親から独立して生計ができない子 満20歳未満の子供)がいないこと
  3. 離婚しても、相手配偶者が、精神的・経済的に生活全般にきわめて過酷な状態にならないこと

 

離婚したとしても、相手配偶者も生活能力があるとか、なくても、生活費とか財産分与をいい感じで提供しているとか全体的な事情をそれぞれ考慮して結論を出すようになってきています。

 

こういった条件はここ数年、緩くなっている方向なので、有責配偶者だけど離婚したい、でもできない、というわけでは決してないんです。

 

最近の民法改正案などでは、「何年かの別居」があれば離婚を認めたらどう?

という感じになっているんですね。

 

となると、将来は別居の原因とか有責とか関係なしに「一定期間の別居」があれば、離婚が認められるっていうことになっていくのかもしれませんね。

 

「有責事由」が原因で離婚する場合には、有責配偶者の相手方は有責配偶者に対して慰謝料を請求できます。

 

慰謝料を請求される有責配偶者ほうも、相手の言い分に振り回されないように、しっかり将来を考えて、相手が望む条件が通るようにすれば離婚も早くできるでしょう。

 

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有責配偶者からの離婚請求が認められるようになった判決以降

有責配偶者からの離婚を認めた判決

 

昭和62年に最高裁判所が出した判決の要旨は、

有責配偶者からなされた離婚請求であっても、夫婦の別居が、両当事者の年齢および同居期間との対比において、相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚によって、精神的・社会的・経済的にきわめて過酷な状況に置かれる等、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反すると言えるような特段の事情が認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一時をもってゆるされないとすることはできない

というものでした。

 

判決の言い回しは難解ですが、それまで一切有責配偶者からの離婚を認めていなかったのが、ゆるくなってきているのがわかりますよね。

 

少し進んで、平成8年に「婚姻制度に関する民法改正案要綱」が法務省から出されました。

 

これには離婚原因の一つとして

 

「夫婦が5年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき」

 

というのが新たに設けられています。

 

ほかにも、

 

離婚原因がある場合でも「離婚が配偶者や子に著しい生活の困窮や耐えがたい苦病をもたらすとき、または離婚の請求が信義に反すると認められるときは、裁判所は離婚の請求を棄却できる」としています。

 

ただ、これらの改正は平成23年10月末時点ではまだ見送られていますが、法律としてよりも前に、離婚裁判になると条件はゆるく、『離婚なんかさせるものか』と意地を張っているほうが負けるようになってきています。

 

夫婦という形式より、実態にあわせるからなんですね。

 

もし、どうしても妻(夫)と別れたい、という有責配偶者でも、自分の非を都合のいい理由に変えたりして、あきらめなければ必ず離婚はできるんです。

 

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