裁判中でも合意ができたときに「和解」
判決より和解での離婚の方が印象がいい
離婚も訴訟まで進んでしまうと
『もういい加減に終わりにしたい!』
と思ってしまうんですよね。
でも終わりにしたら、相手に負けそうになって意地になってしまうという・・・
でも、離婚訴訟での「和解」をすれば、判決を待たずに離婚訴訟を終わらせることができます。
離婚裁判の途中で、
原告(訴えた方)と被告(訴えられた側)のお互いが歩み寄って「離婚しましょう」という合意ができたとき
これが裁判上での和解です。
話し合いで離婚の決着がつくところは、調停離婚と似ていますね。
そして、その時点で離婚が成立(和解離婚)します。
和解離婚できると、「戸籍」に書かれる文言が「判決」と違うので、同じ裁判離婚でも印象が違います。
和解離婚のメリットを紹介します。
裁判官は訴訟中に一度は勧める和解
離婚訴訟の申立てを行って判決が出るまでに、1年以上かかるケースも少なくありません。
長期間の裁判となると、原告にも被告にも精神的に疲れが出てきます。
離婚裁判までくると夫婦関係の修復はほぼ絶望的と言っても過言ではありません。
もう、裁判に突入したら、夫婦関係はガタガタです。
そのような行き詰った状態になっている夫婦の裁判を、いたずらに引きのばすことは本人たちのためにもならないので、
裁判官から和解による解決をしてはどうか、との話を持ちかけられることがあります。
「和解」というと、仲直り的なイメージがありますけど、そういう意味ではないんですよね。
離婚裁判までしているのに、仲直りの意味での和解はあり得ないですね。
そうではなく、裁判官が判決を出して、勝ち負けを決めるより、夫婦の意思が入った和解の方がわだかまりが少ないから、という配慮ですね。
裁判上で和解する方が、形式的にも夫婦が納得した、という結末になりますよね。
そのほうが後々うらみも残りにくい、という配慮もあります。
裁判官も、判決文を書くより”和解”の方が、心理的に楽なはずです。
裁判が終わって戸籍に書かれる内容が違う
離婚訴訟で、判決によって離婚をすると、戸籍には「裁判により離婚」した旨が記載されることになります。
一方で、訴訟中に和解によって解決した場合は「訴訟上の和解による離婚」として届出をすることができます。
- 判決で決着:「裁判により離婚」
- 和解で決着:「訴訟上の和解による離婚」
戸籍を見たときに、「和解」という文字が入っているので、印象がちがいますよね。
同じ離婚でも、協議により円満に離婚した場合と、裁判で離婚した場合とでは、再婚話が持ち上がった歳などに相手に与える印象が違う可能性がないとは言い切れません。
和解での離婚は、微妙なメリットがあるんですね。
和解離婚のメリットは長い裁判を終わらせることにもある
和解離婚のメリットは、今後のなが〜く続きそうな離婚訴訟に終止符を打つことができることです。
離婚裁判は、判決に納得がいかなければ、今後もずっと続けられます。
たとえば、とことん離婚裁判をするような体制に入っていると、一審だけでなく二審、そして最高裁まで進んじゃうこともあります。
これが、訴訟している間に、「もういいじゃん」ってことになれば、”和解”することで、訴訟を終わらせられるんです。
和解離婚は、離婚全体の約1.5%です。
離婚訴訟では、裁判官が和解をすすめる(和解勧告)ことも少なくないのですが、納得がいかなければ応じる必要はありません。
和解離婚の最大のメリットは、いつになったら終わるのかわからない離婚と訴訟が続く日々がなくなることです。
離婚したいと思う夫婦のどちらかは、泥沼の離婚劇から和解離婚で解放されるんです。
判決と同じ効力なので、後日蒸し返してあーだこーだと言われる事が一切なくなります。
とくに子供がいる場合など、その後も養育費などの関係が続くので、
相手を追い詰めるよりも、ある程度余裕を持たせた方が、その後を考えたときによりよい選択になります。
経験上、和解離婚で終わりになると、「お疲れ様」と言いたくなるんですよね。
離婚したいという動機はさまざまでも、離婚となると結論は一つです。
「離婚」をどちらかが言い出した後は、夫婦二人が冷静に話し合うことが難しくなります。
こじれて「離婚」も話し合えないとも多いです。
和解離婚まで至るには、調停→離婚裁判まで進みます。
だから、離婚について話し合う前に家の財産チェックをしておいた方がいいです。
大まかでいいのでまずは、この家にどれくらいの夫婦での財産があるのかを把握することです。
電化製品など細かいものは後回しです。
もし自宅などの不動産を所有しているのなら、売却したらどれくらいの価格になるかを出して、資産価値からの処分を検討しておきましょう。
住宅ローンはその価格から差し引きます。
直近の価格を知っておけば、安心な準備をすることができますよ。→売ったらいくらかチェックしてみてください(無料です)
裁判上の和解制度は比較的新しい
以前は裁判の途中で和解ができても、その時点では離婚は成立せず、
いったん訴訟を取り下げて協議離婚と形をとるか、調停離婚の形をとって離婚届を提出しなければなりませんでした。
いまでは裁判所が「和解調書」を作成した時点で、法的に離婚が成立するようになりました。
2003年までは、和解しても離婚が法的に決まったわけではなかったんです。
「和解離婚」 は2003年に制定された新しい離婚の方法なんですね。
それ以前にも、もちろん和解による離婚はありました。
それは裁判官が和解の勧告を行って、夫婦が合意するものでした。
そこで、裁判が終了して、和解調書が作成されます。
和解離婚のメリットは、離婚騒動が決着することです。
和解離婚の制度ができる以前の場合は、
「和解によって協議離婚の合意が成立した」というだけで、
離婚届を役所に提出した時点で、はじめて離婚が成立するものでした。
つまり、結果的には訴訟で和解したのに、協議離婚と同じだったんです。
この方法だと、せっかく裁判で和解にたどり着いて和解調書まで作っても、
離婚届不受理申出書を、相手側に役所に先に出されてしまうと離婚届は受理されません。
訴訟までして和解したのに、制度上の欠陥で、離婚の話はなかったことになっていたんですね。
そこで、和解離婚が制定されたというわけです。
和解離婚は離婚したい夫婦双方にメリットがある制度
裁判になった場合でも、判決までいかずに訴訟手続き中に和解が成立して、
これで離婚が成立することも多いんです。
「和解離婚」は裁判手続きでの離婚なので、離婚裁判の一種なのですが、
判決で離婚となる通常のケースと区別して「和解離婚」ということもあります
裁判になってガチガチに争って、ヒートアップしていると『和解なんかしたくない』ってことがあるんじゃないですか?
離婚訴訟で先行きがわかりそうだと、和解の方がいい場合もあるんです。
裁判でも和解はできないんじゃないの?」と思えます。
最終的には、判決で決着をつけられる権限のある裁判官が、
判決の見通しを示しながら調整に入るので、話し合いでの解決がつきやすいんですね。
離婚訴訟で判決の見通しも出てきた中では、
和解で柔軟に着地点を探る方がいい場合もあるので、和解で決着をつける方がいい場合もあるんです。
判決を出してしまうと、100を取れる可能性も高いけど、0になることもあり得ますが、
和解ならリスクを回避して70を取ることもできるわけです。
離婚裁判の結論
- 判決:100か0(ゼロ)
- 和解:70くらいもある
ということなんです。
和解離婚では、ほぼ勝ちになることが多いんですね。
もうこれ以上頑張っても仕方ないから判決までしないで、
和解で終わりにしよう
ということなんですね。
離婚のゴールが見えると、つらい離婚訴訟も少しは光が見えてきます。
離婚を言い渡される側にしてみると、
「裁判で離婚を言い渡された」となるよりも、「自分で離婚を選択した」という方が気持ちに余裕が生まれる、ということなんですね。
また、被告となった側にとっても、
裁判離婚で決着となると、民法770条の離婚原因を基準にされるため、
離婚原因を作った側はどうしても不利な立場の交渉を余儀なくされます。
一方で、和解による離婚は、和解離婚として扱われるため、
多少自分が不利な立場にあっても裁判離婚よりは有利な交渉ができる可能性もあります。
和解離婚が終わると一安心する
和解離婚が成立して、和解調書が作成されると、判決と同じ効力になります。
これに、養育費や慰謝料を支払うことが書いてあれば、
支払いがされなくなったら強制執行をすることもできます。
和解離婚では「和解の成立=離婚の成立」になるので、離婚届不受理申出を提出することができなくなりました。
役所に離婚届を10日以内に「和解調書の謄本」を添えて提出する必要はありますが、これは報告になります。
「裁判上の和解」で離婚しても離婚届の提出は必要
離婚裁判の中での和解で離婚が決まったと言っても、市区町村の役場に離婚届の提出は必要です。
離婚確定の日から10日以内に原告は「和解調書の謄本」とともに市区町村役場に離婚届を提出しなければなりません。
ただ、協議離婚で提出する離婚届に必要な証人2人だとか、そういう手続きは不要で、単に書類を提出して戸籍に乗っける手続き的な意味なんですね。
離婚届の証人を探さなくていい、というのも、裁判上の和解のメリットでもありますね。
認諾離婚でも訴訟を終わらせられるメリットがある
また、裁判の途中で被告が原告の請求を全面的に認めて離婚を承諾すれば訴訟を終わらせることができます。
これが「認諾離婚」と呼ばれるものです。
- 認諾離婚は親権を決める必要がなく
- 財産分与や慰謝料請求などにも問題がなく
- 離婚そのものについての訴訟
の場合のみに認められることになっているので、ごく少数しかありません。