離婚を決めてもすぐに離婚訴訟ができないのが調停前置主義
日本の離婚制度は、離婚したいと思ったら、離婚訴訟の前に一度、調停をしないと離婚訴訟ができないようになっているんです。
これが、調停前置主義という離婚手続きの順番の一つです。
たとえば、
片方は、「離婚したくない」と思っている。
もう片方は、「離婚したい」と思っている。
そのとき、『離婚したい』って話し出したら、その後はお互いに話し合うのって難しいですよね。
そうなってしまうと、自分ではもう離婚の話はしないで、さっさと弁護士に一任して離婚訴訟で決着つけてほしい、と思っちゃいます。
でも、日本の離婚制度は、話し合いができないからと言って、すぐに離婚訴訟をすることはできないんです。
訴訟の前に、調停で、調停委員を介して夫婦で話し合う機会を作るためです。
ここでは、調停前置主義の詳しい内容について紹介します。
調停前置主義とは
外国には様々な離婚制度があるのですが、
日本の離婚制度には調停前置主義といって、調停をしなければ離婚訴訟ができない、という流れになっています。
離婚したいんですが話してもラチがあかなさそうなので、すぐに離婚訴訟をしたい んですが・・・
離婚は話し合いをすることが前提になっています。
とは言っても、離婚するくらいなのであまり順調とはいえない話し合いになるのが目に見えていますよね。
そこで、すぐに「じゃぁ訴訟だぁ!」
って思うんですが、日本ではそれができないんです。
離婚の話しがこじれたあとに何をするか 順番 があるんですか?
調停前置主義という制度があって、離婚のように、家庭裁判所への調停申し立てができる事案については、訴訟を提起する前にまず調停を申し立てなければならないことになっています。
根拠となる条文は、家事事件手続法に書かれています。
家事事件手続法
(調停前置主義)
第257条 第244条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
2。3項(省略)
調停前置主義は、できるだけ合意による方がいい、という考え方と、家庭裁判所の調停委員会にも関与させようという考え方によるものです。
この制度を「調停前置主義」といいます。
離婚訴訟の前に調停をする必要がある理由
訴訟となると、公開法廷で裁判をみんなに見せるというのが原則になっていますよね。
でも、離婚って夫婦の問題だから訴訟でみんなに見せるってあんまりないはずです。
家庭に関する事件は、はじめから傍聴人たちが見ている公開の法廷で、当事者を原告と被告として対立して争わせると、かえって紛争が激化したりするおそれがあるんです。
離婚調停は、第三者が夫婦が言い争いにならないように順序だてて話し合いができる環境を作っています。
→離婚調停での雰囲気
いきなり離婚訴訟をする前に、夫婦で話し合いの機会をもう一度持っておこう、という趣旨があるんですね。
だから、非公開の家庭裁判所の調停室で、調停委員を交えて話し合う形で調停を進め、まとまらない場合に初めて訴訟で解決すべきとしているんですね。
調停前置主義を無視して離婚訴訟したらどうなる?
調停前置主義があるから、調停を飛ばして、いきなり離婚訴訟したら、やり直しになりそうですよね。
でも、訴えを出した裁判所が、「まずは調停をしてくださいね」ということで、調停する方に回します。
いきなり訴訟をしても、却下しないということですか?
訴状を受け取った裁判所は、職権で調停をするようになっています。
調停前置主義といっても、ガチガチではないんですね。
離婚訴訟をする時には、弁護士を立てることが多いので、本当はあまり問題になりそうではない事例です。
でも、弁護士を立てずに個人でも訴訟はできるので、調停前置主義の適用になるのに、違反しているから、といって却下はされないんですね。
家事事件手続法には、先に調停を申し立てないで訴えを提起した場合を規定しています。
(家事事件手続法第257条第2項)
家事事件手続法
(調停前置主義)
第257条 2 前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
3 省略
調停をしないで、離婚訴訟を提起しても、受理した裁判所の職権で調停から始めることになるんですね。
結果的に、調停をすることになるのですが、調停ができない事情があれば別です。
調停をすること(付調停)が相当ではない、と裁判所が認めれば、受理された訴えは裁判手続に進みます。
調停前置主義の例外
調停前置主義は、原則なので、例外もあります。
調停をしないで、いきなり訴訟をしてもいい、という場合ですね。
(家事事件手続法第257条第3項)
家事事件手続法
(調停前置主義)
第257条 1項2項 省略
3 裁判所は、前項の規定により事件を調停に付する場合においては、事件を管轄権を有する家庭裁判所に処理させなければならない。ただし、家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、事件を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に処理させることができる。
調停ができない、調停が無意味な場合が調停前置主義の例外となるわけなんですね。
調停前置主義の例外となる事例としては、
- 相手方が行方不明で調停できない
- 相手方が明らかに調停に応じない場合
- 当事者が外国籍で他国の法律との関係から調停が無理
- 相手方が死亡している
- 相手方が精神障害等で調停では解決できない
- 以前に調停で解決できず調停を取り下げた過去がある
調停前置主義の例外といえるもので、実質的に考えられているのが、最後の「以前に調停で解決できず調停を取り下げた過去がある」場合です。
調停を取り下げると、その調停自体が無かった扱いになるんですね。
調停をしてみたけど、どうにも決着をみそうにない
↓
調停を取り下げた
調停を取り下げた場合の扱いとしては、そもそも調停をしていなかった、ということになるはずです。
だから、離婚訴訟を提起しても、調停前置主義で「また調停やってね」と言われそうですが、実際は離婚の訴えを起こすことができます。
前の調停が訴訟するための絶対的な要件ではなくて、実質的に調停ができないなら、調停前置主義の例外として離婚の訴えは受理される、ということなんですね。
離婚が決定的になったら財産チェックから
離婚したいと思いつつ、離婚を言い出した後は、夫婦二人が冷静に話し合うことが難しくなります。
特に、離婚後の財産のことについては話し合えないとこじれることも多いです。
離婚について話し合う前に家の財産チェックをしておいた方がいいです。
大まかでいいのでまずは、この家にどれくらいの夫婦での財産があるのかを把握することです。
電化製品など細かいものは後回しです。
気をつけておきたいのは、マイホームを持っていて離婚をする場合には、売却したらどれくらいの価格になるかを出しておかないと、資産価値からの処分を検討することもできません。
住宅ローンはその価格から差し引きます。
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