金目のものは全部「財産」
財産分与の対象は”お金になるもの”
離婚するときに財産分与をする、って知っていますよね。
でも、そもそも何が財産分与の「財産」か、っていうのがわかりにくいですよね。
夫婦は結婚後、協力して預貯金を作ったり、住宅や自動車を購入したりしますが、離婚にあたってはこれらを精算します。
財産分与の対象になるものは、お金に換えられるものはすべて、と言っても過言ではないんですね。
将来もらえるであろう退職金やら、保険金などもリストに含まれてきます。
離婚での財産分与で言われている
「財産」とは、
- 金銭的価値のあるものはだいたい対象になる。
- 結婚してから離婚するまでに形成された財産が対象。
この二つです。
財産分与の中心は、夫婦共有財産の精算です。
ほとんどの場合、夫婦の収入にかかわらず1/2ずつの分け前になるんですね。
「早く離婚したいから、財産は後回し!」という気持ちもわかります。
少しだけでも、財産分与の対象になるもリストを頭に入れておくと、後悔することも少なくなるはずです。
ここでは、離婚での財産分与の対象となるもので、知っておくべき知識をご紹介します。
財産分与の対象範囲はそうとう広い
財産分与の対象でお金になりそうなものをリストにまとめ上げると、ざっと挙げても、この図のようにたくさんあります。
思っていたよりたくさんありますよね。
法律用語としては、
「財産分与の対象になるもの=共有財産」
と言われているものです。
財産分与の対象になるものリスト
- 預貯金
- 現金
- 有価証券
- 投資信託
- 家具や電化製品などの家財道具
- 土地建物などの不動産
- 債務(ローン)
- 自動車
- 美術品
- 高額な宝石や着物
- ゴルフ会員権
- 年金
厚生年金、共済年金なども財産分与の対象です。
→年金分割をしたらどうなる? - 保険
- 退職金
などが該当します。
夫が稼いできた給料で購入したものってありますよね。
これ、たとえ夫名義の財産でも夫婦の共有財産となって、財産分与の対象になります。
名義が夫にあるか妻にあるかに関わらず…です。
夫が出したお金なのか、妻が出したお金なのかは、夫婦であれば関係ないよ、ってことです。
さらに、夫の物か妻の物か、ネーミングしていても、夫婦二人の共有になるんです。
そうじゃないと、専業主婦のものはお金出してないから、絶対的に不利ですよね。
離婚で財産分与するときの考え方は、
妻が家庭で家事や育児等を行う協力があってこそ形成して維持できた、といえるから、というものです。
だから、財産分与の割合はほとんどの場合、2分の1ずつになんですね。
離婚したいと思いつつ、夫婦のどちらかが離婚を言い出した後は、冷静に話し合うことが難しくなります。
特に、離婚後の財産のことについては話し合えないとこじれることも多いです。
離婚について話し合う前に家の財産チェックをしておいた方がいいです。
大まかでいいのでまずは、この家にどれくらいの夫婦での財産があるのかを把握することです。
土地や建物などの家やマンションがあるなら、ほぼ間違いなく財産分与の対象になります。
名義は、財産分与では関係ありません。夫婦半分ずつの割合で受け取ることになるんですね。
今の自宅の価値と住宅ローンの残高はあらかじめ計算しておくと、有利に離婚条件を展開できる可能性があります。
ローンの方が多いのか、自宅の価値が大きいのかによって、今後の財産分与の方向は大きく変わるからです。
いまではネット上でカンタンに不動産の価値を診断してくれます。
→売ったらいくらかチェックしてみてください(無料です)
「退職金」も財産分与の対象になる
これも?って思うものに、将来受け取る退職金も財産分与の対象になるんです。
退職金って、人によってはそうとう先の話だったりもしますよね。
離婚の時点までの結婚していた期間の分が、財産分与の対象になる判例もあります。
一方が無職であっても、二人とも収入があってもこの基本は変わりません。
だから、極端なことを言えば、離婚原因がある側からも請求できます。
例えば、不倫した妻から、何もしていない夫の方に「退職金」を財産分与として請求できるってことにもなります。
かつては、離婚の時点で存在している財産だけを分与の対象にしていました。
しかし、1980年代後半から、将来約束された財産も分与の対象にする判決がでてきて現在では定着しています。
もちろん、離婚の時点ですでに支払われている退職金も、婚姻期間に対応する部分については対象になるんですね。
ただ、退職金は働き続けて、将来受け取るものです。
どれだけ働けるか、支給されるのかも含めて保証されているものではありません。
計算が困難な場合は、対象外になる可能性もあります。
特に、今の時代で20代や30代で退職金といっても、それほど多額の金額は見込めませんよね。
実際には、定年退職が比較的近い夫婦に限られていたり、
対象を同居期間の2分の1としたり、
計算方法はその夫婦のケースで異なるようです。
熟年離婚で退職金狙い(?_?)っていうことはアリです。
→夫の定年退職後に離婚したいなら妻がとる行動はお金がない状態にならない綿密な準備
「借金」の典型例は住宅ローン
財産というとプラスのものばかりを考えがちですよね。
でも、夫婦の一方が負った借金に関しては、それが夫婦の生活を維持するために必要な借金だった場合ということがあります。
その場合、たとえ、保証人などになっていなくても、マイナスの財産として財産分与の対象になります。
自宅の住宅ローンなどはその典型例です。
よくある例では、自宅の住宅ローンが残っている場合でも、財産分与の財産の価値を計算しますよね。
自宅の価格からローンの残額を引くという形で、マイナス財産が相殺されます
財産分与で課税される可能性のある贈与税を避ける考え方
税金はモノをあげたりもらったりすると課税されます。
とすれば、財産分与すると財産が移転することになるので、税金がかかるように思えますよね。
でも、財産分与では、基本的に税金はかかりません。
注意しておきたいのは、財産の分け方によっては 贈与税 がかかってしまうことがあることです。
離婚するときに、現金や預貯金についてはそのまま財産を分与すればよいわけですが、自動車や家財道具といったモノ の場合には、どのように分ければ良いのでしょうか?
財産分与の分け方は基本的に、
- 売却して換金して分ける
- 現物を取得した方が相手に対価(代償金)を支払う
- 現物を分ける
という方法のいずれかを取ることになります。
自動車や家財道具も売却して、お金を分けるんですか?
たとえば、自動車の場合、時価からローン残高を引いたものを分けます。
財産分与が不動産の場合と考え方は同じですね。
ただ、車は手順を踏んでいけば効率がいいです。
→財産分与で車を効率よく処分できる3つの手順
家財道具などの場合は、いちいち細かく換金するのもわずらわしいので、妻は冷蔵庫、夫はテレビ、というように等価のものを分け合うのが一般的です。
財産分与したら 税金 はかかるんですか?
人にモノをあげると、いろいろ税金ってかかるじゃないですかぁ
財産分与によって分与される財産については、基本的には非課税が原則です。
ただし、財産分与といっても、不相当に額が多すぎる場合は贈与税の対象になるときがあります。
これまで共に生活してきた夫婦にとって、結婚生活の中で築いた財産は金銭だけではありません。
離婚に際して、夫婦の財産を清算するということで、財産分与を行うことになります。
つまり、財産分与で贈与税が課税されるのを避ける考え方というのは、夫婦の財産を清算する形があればいい、ということになります。
サラリーマンであるにもかかわらず、数億円の財産分与を相手にした、なんてときは、不相当に財産を分与したとして贈与税の対象になるかもしれませんね。
贈与税とみなされると財産分与でも税金がかかる
財産分与は基本的に税金がかからないのは夫婦の清算の面があるからとも言えるのですが、逸脱してしまうと税金がかかってくることもあります。
財産分与が贈与税の対象になる場合
具体的には次の2つの場合です。
- 分与された財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の価額や、その他全ての事情を考慮してもなお多すぎる場合(この場合、多すぎる部分に贈与税がかかる)
- 離婚が贈与税や相続税を逃れるために行われたと認められる場合(この場合、離婚によってもらった財産全てに贈与税がかかる)
不動産やその他の財産の評価と分配方法
夫婦二人で話し合って、誰が何を所有するかが決まれば問題ないのですが、そのように分けられないものもあります。
財産分与で自宅などの不動産が対象になるときは、今、売却したらどのくらいの値段で売れるのか、という基準で決めます。
不動産は現金で換算して、処分するという考え方です。
マイホームを持っていて離婚をする場合の簡単な計算方法は→住宅ローンがある場合の、財産分与の計算方法
預貯金や現金は分与の割合さえ決まれば、そのまま分けることはできます。しかし、それ以外のものは、基本的に現金に換算して価値を評価する必要があります。
値がつかないような(安い)家財道具などは、わざわざ査定しなくても大丈夫です。できれば、欲しいものを話し合いで単純に分けた方が面倒はありません。
ただ、その中に高価な家具が混じっていたり、一方がほとんどを持っていったりするなら、現金分を減らすなどの調整をした方がいいです。後々まで尾をひくのも嫌ですしね。
株式や国債などの有価証券といった投資商品は、売却してから分けるか、時価評価して現物を分けるかの2つの方法があります。
評価は購入時の価格ではなく、時価で行います。
投資商品は効果の時も安値の時もあるので、時期によって分配方法を考える必要があります。
高価の時なら売却したお金を分けるのもいいのですが、安値で短期的に上昇が見込めそうなら、現物で分ける方がいいかもしれません。
高価な美術品などは鑑定してもらうことができるので、売却しない場合には、品物をもらう側が評価額を現金分から差し引くなどをすることが多いです。
加入中の生命保険などは、名義変更したり、解約して返戻金を分割するなどして処理します。
財産分与の対象にならないもの
夫のものは全部、妻のもの?
では、ありません(^^)
財産分与の対象にならないものも、法律上決まっているものもあります。
財産分与の対象にならないものリスト
- 結婚前に個人で所有していた財産
- 結婚前の借金、ギャンブルや浪費によって勝手に作った借金
- 相続した財産
- 結婚前に与えられた財産
- 結婚後、父母から贈与された財産
- 洋服やアクセサリー、時計、バックなど個人で使用する日用品
ざっくり言えば、自分にしか関わりのないもの、ということですよね。
- 結婚前に蓄えていた財産
- 結婚前に実家からもらってきた財産
- 結婚前あるいは結婚中に自分の親や兄弟から相続した財産
などは固有の財産で財産分与の対象にはなりません。
たとえば、
夫が離婚するときに3000万円持っていたとしても、
そのうち2000万円が結婚前にあったものだとしたら、
分与の対象となるのは差額の1000万円です。
また、婚姻後に得たものでも相続で得た財産などは特有財産といって、財産分与の精算の対象にはならないんです。
共働きで、結婚生活に必要な費用を収入に応じて分担し、
それ以外の収入は各人名義の財産としていた場合には、各人名義の財産も対象にはならないんです。
結婚生活でのやりくりが報われることってないんですか?
「特別の寄与」と言って、財産を減らさないように維持する努力をしていた場合、その努力の分が認められることがあり得ますね。
亡くなった人が、ずっと介護してくれた人に財産の一部をあげることなどが例です。
通常期待されるような程度の貢献を超えるような貢献をした場合です。
妻に、夫婦の財産を維持するために特別の寄与が認められる場合、寄与に応じた分与を求めることができる場合がありますが、
離婚の場面では、難しいかもしれませんね。
財産分与の請求には時効があります
離婚での財産分与は、精神的にもきつくて、手続きもとても面倒なので、つい後回しにしがちです。
財産分与は離婚してから2年以内に請求しなければならないので注意が必要です。
→財産分与の時効期間は2年あるけど何も決めずに離婚するの危険な理由とは
逆に言えば、離婚後2年以内なら財産分与の請求ができる、っていうことなんですね。
財産分与は離婚を考えたら通らないといけない道です。
しっかりケジメをつけておくべきです。