内縁関係の子連れ結婚 そして離婚
子連れでの再婚は、妻の方は夫と子供の間で、夫は妻と子供の間で板挟みになってしまいますよね。
子供の主張と親の考え。
どちらを選択するか悩ましい立場になってしまいます。
そんな難しい立場に立ってしまうと、
夫婦としての仲は良好、でも子供の幸せのために離婚
結局はまた離婚、という選択をとって再出発をすることになってしまいます。
片方の子連れ再婚だけでもたいへんなのに、夫婦が子連れでしかも婚姻届を出せない事情がある事実婚の場合、
夫婦が良好な関係でもなかなか幸せになるのは難しいかもしれません。
タダシさんは入籍しないまま結婚生活を続けていた桜子さんと別れることを決めました。
子連れ再婚で、事実婚を選択をせざるを得なかった離婚体験談です。
内縁関係のまま子連れ事実婚
商社に勤める玉置タダシさん(仮名)はいわゆるバツイチ。
小学校2年生の息子と二人暮らしです。
元妻の不倫が原因で離婚したものの、父子家庭でもしっかりと子育てをこなし、年齢も44歳になり、仕事も順調です。
取引先との折衝などで出張が多いため、子供のためにも再婚をものすごく望んでいたのです。
そんな事情を知っている友人が、同じバツイチで小学校3年生の娘さんと暮らす美田園桜子さん(仮名)を紹介してくれたのです。
桜子さんも40歳を過ぎたばかり。
元夫のギャンブルが原因で、毎日のように借金取りが来ては追い返す生活に耐えられず、離婚しました。
そして、もう再婚はできないものと思っていました。
友人の仲介もあって、お互いの子供と一緒に何度か食事をした後、とんとん拍子で話は進み、二人は再婚することにしました。
タダシさんも桜子さんも、この相手となら平穏な暮らしができると思ったからです。
もちろん、お互いの子供たちも賛成したのはいうまでもありません。
ただ、桜子さんの娘のほうだけは母親の名字が変わることには反対でした。
そのため二人は婚姻届を出さない事実婚ということで生活を送っていたのです。
子連れ再婚して4人の同居生活が始まった
桜子さん母娘が、タダシさんの持ち家に引っ越してきて、4人の暮らしが始まったのは3年前。
しっかり者の桜子さんが、専業主婦として家のこと全てを引き受けてくれたのです。おかげでタダシさんは仕事に専念できるようになりました。
一方の桜子さんも、タダシさんから決まった生活費がもらえるので、これまでのようにパートの掛け持ちをしなくてもよくなったのです。
また、お互いの子供同士も本当の兄弟のようです。
桜子さんの娘さんはお姉ちゃんとしてタダシさんの息子をかわいがってめんどうを見てくれます。
タダシさんの息子も、桜子さんの娘さんを「おねぇちゃん」と呼んでいつも一緒です。
毎日笑顔の絶えない家庭となって、タダシさんも桜子さんも夫婦として再婚してよかった、と改めて幸せを感じていました。
戸籍「姓」が変わる説得が兄弟のいじめにつながっていた
しかしその幸せも長くは続きませんでした。
桜子さんがタダシさんの子供を妊娠して、5人目の家族として男の子が生まれた頃から少しずつ家族関係がギクシャクしてきたのです。
桜子さんの娘さんが「名字が変わるのがイヤ」ということで、夫婦として婚姻届を出していないので、法律的には正式の夫婦ではありません。
そのため、生まれてくる子供は桜子さんの籍に入ることになり、このままでは夫の姓を名乗ることができません。桜子さんの娘と同じ名字のままです。
タダシさんも桜子さんも生まれてくる子供のことを考えて、婚姻届を出すことを決意し、そのことを桜子さんの娘にも話しました。
婚姻届けを出すということは、「桜子さんの娘の約束を破ること」になることはわかっていました。
でも、一緒に暮らして2年が過ぎます。
タダシさんにも懐いているし今ならきっとわかってくれるだろう、と思ったからのです。
ところが、桜子さんの娘から猛烈な反対にあってしまったのです。
「ママのうそつき!一緒に住んでも私もママも名字は変えないっていったじゃない!」
もちろん、説得はしました。
- 生まれてくる子供にタダシさんの名字をつけるには母親の自分がタダシさんの姓を名乗るしかないこと
- 今のまま旧姓を名乗ってもいいし、タダシさんと養子縁組して新しい名前を名乗ってもいい
と一生懸命に説明したのですが、
「絶対にイヤ!」
と首に横を振るだけです。
思っていたのとはかなり違った展開になり、焦る桜子さんを見て、タダシさんは
「難しい年頃だし、下手に刺激しない方がいい。
この子は僕らの子だから、婚姻届さえ出せば後からでも名字は変わることができる。
名字の問題はこの子が小学校にあがるまでに解決すればいいんじゃないか」
と少し時間をみてからにしようと提案し、とりあえず生まれた子供の認知だけをしたのです。
桜子さんは、タダシさんの優しさに感謝し、ほっとした反面、申しわけないという思いでいっぱいでした。
そのため、その後もことあるごとに娘を説得したのです。
しかし、娘はますます反発し、そのうっぷんがタダシさんの息子の方に向けられたのです。
子供部屋の中だけでなく、学校の行き帰りでも人目を盗んでいじめを始めるようになったのです。
最初は無視したり、言葉でいじめるだけでしたが、やがて殴る蹴るの暴行までふるうようになったのです。
そのことに気がついた桜子さんは、驚きました。そして、娘をきつく怒ったのです。
しかし、その場は収まってもまたしばらくすると、いじめが始まるのです。
その繰り返しに困った桜子さんですが、タダシさんに相談しようにも彼は運悪く長期出張で外国にいます。
ときどき電話はかかってきますが、桜子さんの『心配させたくない』との思いから、
つい「こっちはみんな元気。子供たちも仲良くしているわ」と、ウソをついてしまったのです。
夫の暴力が引き金になって子連れ再婚は再び離婚へ
帰国してからそのことを知ったタダシさんは激怒しました。
いきなり桜子さんの娘の髪をつかんでたたいたのです。
泣いて制止する桜子さんにも手を挙げたのです。
「何をするんです!まだ子供じゃないですか!」
「うるさい! おまえがしからないから、こいつがつけ上がるんだ!オレがしつけてやる! 文句があるなら離婚だ! 出て行け・・・・・」
タダシさんはそう怒鳴りました。
子連れ再婚だと、夫は妻と、妻は夫と、子供の間で板挟みとなって、難しい立場に立つこともあります。
もとはといえば、子供のいじめが原因です。
桜子さんはその後も必死に謝りましたが、タダシさんの怒りは一向におさまりません。
彼の口をついて出るのは「別れる」という言葉だけです。
しかも、娘を見つめるタダシさんのまなざしには、日々憎しみが増していくような気がしました。
娘の方はタダシさんを見るとおびえ、すぐ自分の部屋に閉じこもってしまうのです。
桜子さんはそんな二人の様子を見てやり直すことをあきらめました。
そして、半月ほど前、一緒に暮らした期間は3年ほどでしたが娘と2歳になったばかりの男の子を連れて、タダシさんの家を出て行ったのです。
「長い間お世話になりました」
桜子さんがそう挨拶して去ったので、タダシさんは何の条件もなく穏便に離婚ができたと思っていました。
意外な離婚の結末はお金
ところが、桜子さんは代理人の弁護士を通じて、
財産分与、慰謝料、そして生まれた子供や娘の養育費として1000万円を要求してきたのです。
法律上、正式な夫婦でもなく、離婚の原因は桜子さん側にあると思っているタダシさんにとっては、そんな法外な金額の支払いには応じたくありません。
第一、自分の子供でもない娘さんの養育費までなぜ払う必要があるのかと憤慨しています。
タダシさんはどうしても納得がいかず、弁護士に依頼することにしました。
弁護士は、タダシさんの話を聞いてからすぐに
「内縁の夫婦でも財産分与や慰謝料など離婚の支払いはあります」
と言ったのです。
再び憤慨してしまっているタダシさんに弁護士は話し始めました。
「内縁関係でも、『結婚に準ずる関係」として一定の法的保護が受けられることになっています。
たとえば、民法の結婚や離婚に関する規定のうち、夫婦の同居義務、扶養義務の規定などは内縁関係の夫婦にも適用されます。
互いに貞操を守る義務も当然にあります。
しかし子の夫婦間に子供が生まれても、その子供は父親と同じ姓を名乗ることは原則としてできませんし、また夫婦の一方が死亡してもその財産は相続権はありません。」
内縁の解消について詳しい解説は→こちら
「では、うちの場合は内縁解消の原因はどちらにあるのですか?」
タダシさんがききました。
「タダシさん一家の場合、内縁解消の原因がどちらにあるか一概には言えませんね。
しかし、タダシさんと桜子さんの内縁関係は3年におよんでいるし、その間に桜子さんが専業主婦として家事全般を取り仕切ってきたので、タダシさんとしては一定の財産分与はしなければならないです。
その額は、タダシさんの収入や資産、あるいは桜子さんの貢献度によっても異なるんですが、家庭裁判所の調停事件等を参考にすると、200〜300万円程度が妥当と言えるかもしれません。
養育費の問題ですが、タダシさんと桜子さんとの間に生まれた子供を認知しています。
その子供の養育費について当然に支払い義務があります。少なくとも高校卒業年齢に達するまでは養育費を払わなければならないでしょう。
もし、タダシさんの息子さんが大学に進学して、その学費等もタダシさんがめんどうを見ているような場合は、生まれた子供に対する養育費の支払時期は大学卒業までになるでしょう。
桜子さんの娘さんである連れ子に対する養育費については、養子縁組したなどの特殊な事情がない限り、タダシさんには原則として支払い義務はありません。
このほかにも、別居した時期と二人が正式に内縁解消に合意した時期とが異なっている場合には、
桜子さんと子供らの別居中の生活費についても、まだ内縁関係が続いているとして、タダシさんが負担しなければならないこともあるかもしれません。」
弁護士の説明にタダシさんは内縁関係とお金の問題について、法律上で結婚・離婚した場合の違いについて理解したのでした。
そして、事実婚の解消は離婚届などがないことから、あっけないものかもしれない、とあらためて感じていたのでした。
子連れ再婚は、続けるのは難しい
内縁の解消はいつでも自由
内縁の解消でも財産分与・慰謝料・養育費支払いはある
内縁の夫婦間の子供は、原則と母親の籍に入り、母方の姓を名乗る
実は事実婚でも苗字を変えられる!?
内縁関係で生まれた子供も、裁判所の許可で父親の姓を名乗ることもできる
内縁関係の夫婦間に生まれた子供でも、一定の手続きによって父親の姓を名乗ることもできます。
方法は2つあります。
- 内縁関係の夫婦が、子供の出生後に婚姻届を出した場合
- 父親が認知した後、その姓の変更について家庭裁判所に許可を求める方法
一つ目は、内縁関係の夫婦が、子供の出生後に婚姻届を出した場合です。
法律上は「準正」といいます。この場合は、子供は嫡出子となります。
もう一つは、父親が認知した後、その姓の変更について家庭裁判所に許可を求める
方法です。
この場合には、父親の姓は名乗れますが、非嫡出子であることには変わりありません。
名字が変ることが学校や職場で目立たつことがあまりないなどの理由で、新しい年度にタイミングを合わせた離婚も多いんです。
そして、タダシさんと桜子さんが後者の方法について知っていれば、こんな悲劇は起こらなかったのかもしれません。
子連れ再婚の法律関係は子供との関係が複雑
平成28年度 人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」(厚生労働省)によれば、結婚するカップルのうち、再婚での件数は4組に1組ほどです。
再婚が珍しいことではなくなったなら、子連れ再婚もありえます。
でも、子供が小さい頃にはなついてくれたのに、年頃になると突然、
「本当の親じゃないくせにさ…」
と、事実であるけど、再婚親がショックを受ける言葉を聞くこともあり得る覚悟をする必要があるんですね。
事実婚の夫婦も、一定の法的保護を受けるのですが、婚姻届を出した法律婚の夫婦と比べると、不利であることは否めません。
たとえば、夫婦なのにお互いが法定相続人になれないですし、生まれた子供は母親の籍に入り、非嫡出子として扱われることになります。
たとえ、父親が認知しても、それだけでは父親の姓を名乗ることはできないですし、遺産に対する相続分は実の子供の2分の1です。
タダシさんと桜子さんの二人の間に生まれた子供は、双方の法定相続人ですが、娘さんはタダシさんと、息子さんは桜子さんと養子縁組しない限り、それぞれの実夫や以外の法定相続人にはなれません。
これはたとえ婚姻届を提出して、タダシさんと桜子さんが法律上、正式な夫婦になった場合でも同じです。
離婚かな、と思ったらまずは財産チェック
離婚のときに問題になるのは、子どものこと・財産のことがほとんどです。
離婚したいと思いつつ、離婚を言い出した後は、夫婦二人が冷静に話し合うことが難しくなります。
特に、離婚後の財産のことについては話し合えないとこじれることも多いです。
離婚について話し合う前に家の財産チェックをしておいた方がいいです。
気をつけておきたいのは、マイホームを持っていて離婚をする場合には、売却したらどれくらいの価格になるかを出しておかないと、資産価値からの処分を検討することもできません。
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