夫婦円満にやってきたと思っていたのは夫だけ
最近よく聞かれるようになった 熟年離婚。
妻は不満・我慢ばかり、夫は家庭の事は関与せず。
そんな長い間の結婚生活後に、夫の定年退職と同時に、妻が離婚を言い出すパターンが最も多いです。
そんな熟年離婚はお金の問題が一番の悩みどころです。
これから一人で生きていくためのお金ですね。
特に、熟年離婚で期待を大きくしているのは年金をあてにしているケースです。
結論から言えば、熟年離婚では、勝也の年金だけをあてにして離婚はしない方がいいです。
財産分与や年金分割などの制度ができてはいますが、一筋縄ではいかないのが熟年離婚の特徴です。
この離婚体験談では、年金分割をしても思ったほどのお金が入らないことがわかって、断念した部分も紹介しています。
円満だと思っていたのは亭主関白のの夫だけだった
夫 勝也(仮名)は59歳。堅実な銀行業務の下請け会社のサラリーマン。
妻 美代子(仮名)は56歳。専業主婦で、結婚は28年。
子供は男の子が二人いますが、すでに独立してともに結婚もして隣の県に住んでいます。
勝也は会社では、最後の2年間業務課長として勤務していました。残りあと5ヶ月で定年退職という時期でした。
勝也はその後、会社の嘱託社員として、週に3日程度、今の会社に勤務し続けることができることが決まっています。
不況とはいえ、退職金も38年間勤め上げたからそこそこはもらえるはずだし、定年後もなんとか会社に残ることができる。
これからは、時間を見て美代子と二人で旅行なんか行って、のんびり老後の生活を楽しみたいと思っていたのです。
いままで、勝也は家のことは美代子に任せ、バブルの崩壊後など安月給で子育て、住宅ローンに負われる中、ほんとうによくやりくりをしてくれた。
自分のような頑固な人間によくついてきてくれた、としみじみ思っているのです。
ある日の夕食後、ふだんはほとんど美代子に話しかけることもない勝也は、珍しく話かけたのです。
「どうだい、今の会社を定年退職したら、海外旅行でもするか。どこがいいかな。」
勝也は、てっきり美代子が喜んでくれると思って言ったのです。
しかし、返ってきた返事はとても意外なものでした。
「あなた一人で行ってきてください。」
あまりにも思っていたことと違う言葉を聞いたので、もう一度言ってもらうことにしました。
すると、
「それよりお願いがあるのですが、私と離婚してください。」
いきなりの美代子の発言に勝也はびっくりしました。
しばらく返す言葉もなく唖然としていましたが気を取り直して言いました。
「本気かい? 冗談だろう。そんな返事をするなよ。」
しかし、美代子は
「離婚してください。」
と繰り返すばかりで勝也も美代子が冗談で言っているのではないことを悟りました。
「どうしてなんだ!理由を教えてくれ。」
戸惑いと興奮、そして生じてきた怒りが混じったように言いました。
「わがままなあなたの老後の面倒を、もうみたくはないんです。」
確かに勝也としてはいわゆる亭主関白でした。何事も家庭を仕切ってきて、子供や家計のことは美代子に任せっきりの典型的な勝也。
「家族のために一生懸命働いてきたんだぞ!離婚なんかできるかぁ!」
勝也は激高したのです。
「ほら、そうして怒る。だから離婚したいんです。確かに伝えましたよ。」
美代子は冷静です。
「離婚してどうやって食っていくんだ。」
勝也はなんとか離婚を思いとどまらせようとしました。
「この家の権利の半分と退職金の半分をください。それに年金も半分はもらえるそうですから大丈夫ですよ。」
美代子はそう言うと、部屋から出て行きました。
妻の美代子は、長年サラリーマンをしていた夫 勝也の年金分割をあてにしていて、離婚後の生活費はそれで十分まかなえる、と考えていました。
後に残された勝也はテーブルの上にあったビールを飲み干すしかありませんでした。
妻の財産分与の皮算用
妻 美代子は自分で考えていた老後の生活設計がありました。
長年やってきた茶道の師範の免状をいかして、教室を開こうというものです。
その資金は、離婚の財産分与と、タンス引き出しに貯めておいた500万円ほどの貯金が元金です。
自分で試算した皮算用では、
- 夫 勝也の退職金の半分として1000万円
- 家の財産分与が2000万円
- 夫名義の貯金の半分の500万円
- 自分の貯金の500万円
合計4000万円が離婚後に手元に入る、というものです。
これだけあれば、2DKほどのマンションを買って、そこで茶道教室を開くには十分な元手になると思っていたのです。
それに、いずれ離婚時年金分割による年金も毎月20万程度は入ってくるだろう、と予想していたのです。
2週間ほど経って、美代子は家事を淡々とこなしていましたが、夫婦には会話はありませんでした。
ここ数十年は、もともとこんな状態だったのです。
会話がなくても亭主関白の夫 勝也は『家庭はうまくいっている』、そう思っていたのですが、妻 美代子はこの生活から解放されたい一心で、夫のサラリーマンの退職時期に「離婚したい」と言う機会を狙っていたのです。
そんなある日、勝也が話し合おう、と言ってきたのです。
リビングのテーブルを挟んで二人で会話をすることになりました。
「で、離婚後の生活はどうするんだ。」
勝也は、離婚後に美代子がどうやって生活していくのか知りたかったのです。
「それより、あなた。財産分与はいくらもらえるのかしら。」
美代子は勝也の話に反して、お金の話を持ち出しました。
「離婚するかどうかも決まっていないのに、そんなもん知るかぁ!」
勝也はぶっきらぼうになかば怒ったように答えました。
「退職金の半分とこの家の権利の半分、それにあなたの貯金の半分、3500万程度にはなると思いますけど。。。。」
「離婚したいという君にどうして3500万円もオレが払うんだ。」
バカバカしくて話にならないな、と勝也は思ったのです。
「財産分与はどちらが離婚を言い出そうと関係ないですよ。」
美代子はメモ用紙に書いた離婚の清算金額を書いたものを勝也に渡しました。
勝也は手に取ってみてしばらく考え込んだのです。
勝也はお金の話などしたくありませんでしたが、あまりの美代子の一方的な要求に反論しました。
「もし、この計算通りに支払っても、2000万円にもならないよ。まず、退職金は不景気なときに退職金規程が変わって、もらえてもせいぜい1500万円がいいところだろう。
この土地と家だって、今は時価3000万程度くらいだし、住宅ローンが1500万円くらい残っている。
貯金も1000万円くらいあるけど、子供二人の学資の返済やら車のローンなの借金で300万近くある。
それに、年金が満額もらえるまでには、あと数年かかるし、老後の生活は年金だけが頼りになる。」
「借金はあなたの借金でしょう。あなたが払い続けなさいよ。」
「残念だけど、借金を引いた残りが財産分与の対象になるんだよ。
分けるなら、家も売らなければならないし経費もかかってくる。二人でつましく生活するぐらいだけの貯金しかないよ。
それに、年金分割をあてにしているのかもしれないけど、オレの年金の半分をもらえると思ったら大間違いだ。
年金分割でもらえるのは婚姻期間中の老齢厚生年金の部分の半分だから。
オレと君が結婚したのは、たしか35歳の時だから、25年分だけなんだよ。
それに、平成20年の4月からの離婚だと、君のもくろみ通り、自動的に分割されることになるんだけど、それまでの年金については当事者の合意か家庭裁判所の決定が必要なんだぞ。」
美代子は急に黙り込んでしまいました。
思っていたより、離婚して手に入る額が少なく、すこし、動転してしまっているようでした。
勝也の言うことが、あまり理解できないようです。
しかし、なんとなく財産分与も自分の皮算用よりもずっと少なく、年金も勝也の分の半分などとてももらえそうにないことだけは理解できたのです。
離婚の時期を延ばしてみることにした
こうなった以上は「離婚は仕方ないな」、と勝也は思うようになったのです。
気持ちの上で、離れていることを認識したのです。
と、同時に今までの結婚生活のダメな部分をとって、これからのことを考えるにはある程度時間も必要だ、とも感じていました。
そこで、勝也は老齢年金が全額支給される65歳までの5年間の家庭内別居を提案したのです。
その間は、
- 今までと違ってお互いの生活には一切干渉もしない
- 美代子は自宅で茶道教室を開いてもいい
- 退職金の半分の約700万円は渡す
、という条件でした。
意外なことに、美代子はこの条件をすんなりとのんだのです。
熟年離婚がささやかれる中での、熟年勝也婦の家庭内別居が始まったのです。
勝也は自分の分の食事、洗濯などの家事を始めました。単身赴任時代から15年ぶりくらいのことでした。
そして5年後に離婚へ
5年後に年金を全額もらえるようになった65歳。
勝也は、嘱託社員という会社での地位も終わり、サラリーマン生活の終止符を打つことになりました。
美代子も、茶道教室が安定し、一定の収入を得ることができるようになりました。
「やっぱり離婚しましょう。」
美代子から言い出してきました。
しかし、勝也はそのときは冷静でした。
どのように話し合うのかはわからないくても、美代子がそれでも離婚したいというならば、その時はすぐに承諾しよう、と決めていたからです。
そして何も言わずに、離婚届に判を押したのです。
今では勝也も一人暮らしに慣れて家事もできるようになっていました。
美代子との長い勝也婦生活の大きな区切りが終わり、熟年離婚 という結果になったのです。
熟年離婚は簡単にいかない
離婚後の生活設計は慎重に
長い婚姻生活のアカはなかなか落とせない
熟年離婚はお金の面ではバラ色ではない
子供の自立や夫の定年退職。
この大きな分岐点に夫婦が通過すると、いやおうなく夫婦は直接向かい合わせになります。
その時点で、考え方や生き方が大きく違っていたことに気がつくこともありあります。
離婚を決意する一番の理由は感情的なことかもしれません。性格の不一致ということで、かたずけられてしまうこともありますよね。
熟年離婚では婚姻期間が長いことから、さまざまな問題が生じます。
「厚生労働省・平成27年人口動態調査」の統計では、前年度より離婚の増加率が高いのは、同居期間35年以上の夫婦(7.7%増)、ついで同居期間25〜30年の夫婦(6.7%増)の離婚、という結果が出ています。
「同居期間が25年以上」という熟年クラスの離婚件数が高い水準であるんですね。
長年、結婚生活という名のもとにいた夫婦が離婚をする、というのは普通に考えるとあまり幸せなこと思えないかもしれません。
それでもお互いのこれからの人生にとってプラスになるのであれば、熟年離婚の選択はありです。
特に問題になるのは、お金・財産のことがほとんどです。
熟年離婚で年金分割をしたら、夫にとっても本来なら受け取れる厚生年金の金額が半分になってしまうわけです。
何もお金の準備をしていなければ、夫婦それぞれが老後の生活は心細くなります。
熟年離婚によって「老後ビンボー」ということになりかねません。
長い間、離婚したいと思いつつ離婚を言い出した後は、夫婦二人が冷静に話し合うことが難しくなります。
離婚後の財産のことについてこじれて「離婚」も話し合えないとも多いです。
これまでガマンしてきた恨み辛みが一気に爆発します。
だから、離婚について話し合う前に家の財産チェックをしておいた方がいいです。
不動産、預貯金、借金、年金などお金関係。。。。
もし自宅などの不動産を所有しているのなら、最終的に離婚したとなるとお金の問題は、財産分与で清算、という方法をとります。
法律上、財産分与は、婚姻期間中に築いた財産を夫2分の1、妻2分の1の割合で分け合うのが原則です。
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