監護者の変更に家庭裁判所の許可などは要件にはない
監護者を変更したいときには、両親の協議だけでもすることができます。
親権者の変更と違って、戸籍上の記載がないので、変更する要件に、家庭裁判所の許可などはいらないんです。
親権者には、法的な手続きの代理権や、財産管理、子どもの身上を監護をすることになっています。
ただ、離婚時の例外として、親権者とは別に、子どもの身上を監護する監護権者を指定することもできます。
つまり、離婚時には、親権者と監護権者が別々に指定される場合ですね。
この監護権者を、後から変更するには、家庭裁判所の許可などはいらないんです。
離婚の時に、
- 『監護者と親権者を分けていたこと』
- 『後になって、子供にとって育てるのは違う方がいい』
という条件があるだけで、監護者を変更できます。
ここでは、離婚してから子供の監護権者の変更について、詳しく解説します。
監護者の変更をする2つのパターン
監護権を変更するパターンは2つあります。
- 親権者が、監護権だけ手放す
- 監護権者が、親権者から監護権を戻す
事例をあげてみますね。
親権者が、監護権だけ手放す場合
監護権者の変更は、離婚したときに、子供の親権と監護権を取得したけど、どうしても子供を育てるのが難しくなった時に、考えることが多いんですね。
たとえば、仕事の都合で、今の場所からかなり遠方や海外に引っ越しをしなければならい場合です。
子どもの監護権を、もう一方の親に変更したい、といった場合に利用されることがあります。
親権者が子供を育てられないから、監護権だけもう一方の親に変更する
これが、親権者が監護権を手放す場合です。
監護権者が、親権者から監護権を戻す場合
離婚したときに親権者と監護者を分けたんですね。
妻である私が親権者になって、夫が監護者、というふうに決めたんです。
でも、離婚してから2年ほど経ったのですが、元夫の方は監護しているとは言えない状況なので、監護者も私にしたいんですが、どうすればいいんでしょうか?
監護権者は親権者と違って戸籍にも記載されないので、話し合いで自由に変更できますよ。
離婚が長引くよりも、しかたなしに、親権だけ手放し子供を相手に引き渡したものの、しばらくしたら案の定、子供を育てるのは無理だった、という人もいます。
→早く離婚したいなら子供の親権にこだわらず監護者になる方法もある
監護権を親権者に戻すというわけです。
監護権の変更で話し合いができなければ調停もできる
監護権の変更をするには、親権者の場合と違って、家庭裁判所の許可などの要件はいらないんですね。
でも、離婚した夫婦って、必ずしも円満ではないわけです。
一度は、離婚した仲で親権で争ったから、監護権者と親権者で分けている場合もあります。
そういった状況であれば、ほとんどの場合は口もききたくないことが多いでしょう。
元夫婦同士で、監護者を変更する協議ができないときには、家庭裁判所に子の監護者変更の調停、または子の監護者変更の審判を申し立てます。→子の監護者の指定調停(裁判所のホームページ)
民法上に監護権で争いがあったら家庭裁判所が関わる規定があります。(第766条3項)
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第766条
- 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者…その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
- (省略)
- 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
- (省略)
二人の協議で監護者を変更することはできるのですが、やはり調停という公平な第三者が仲介した方が、スムーズに話は進みます。
監護者変更の申立は、親権者変更の申立てと違って、親族に限らず誰でも申し立てることができるんです。
ただ、子供本人には申立の権利はありません。
一般的には、どんな場合に監護者の変更が認められるんですか?
監護者の変更が家庭裁判所の調停や審判で認められるのは、親権者変更と同じで家庭裁判所が子供の福祉、利益のために必要があると認めたときに限られると言えます。
親権者や監護権者を裁判所が変更する要件について、条文上は、子の利益のために必要があるということしか規定はされていません。
どちらも同じように思えますよね。
でも、親権者を変更するのは、とても難しいんですね。
監護者の変更は、親同士の協議でなら簡単にできます。
監護者の変更は、親権者変更と違って戸籍に記載されない事項なので、親権者変更の場合と違って、柔軟に認められています。
監護権者をまだ決めていない状態で初めて決める場合には父と母の合意だけで決めることができます。
でも、調停や裁判になると、条件は途端に厳しくなります。
親権者が監護している場合は監護権の変更は難しい
親権者と監護者が同じ場合の変更は難しいのが現実です。
親権者が子供の監護権者も兼ねていて、すでに監護もしている場合のことですね。
親権の変更によって、子供の生活に影響が及ぼされると考えられる場合は、子供を取り巻く環境はできるだけ継続して、安定していることが望ましいという観点から、変更が認められることは少ないようです。
現在の親権者に、子供を養育・監護する意思が認められないなどの問題があれば、親権者の変更は認められやすいでしょうね。
離婚後の生活は、子供にとって、生活とお金の問題もからむので、できるだけ丁寧に慎重になったほうがいいです。
離婚時には特にお金に関しての条件をしっかり決めさえすれば、離婚後でも生活に困る事はほとんどなくなります。
逆に、お金の事をしっかり把握しないまま、感情と勢いで離婚してしまうと、あとあと大変になってしまいます。