親権とは
親権とは、成年に達しない子を監護、教育し(監護権)、
その財産を管理するため、その父母に与えられた身分上および財産上の権利・義務(財産管理権)の総称のことです。
親権には2つの権利が含まれています
その未成年の子に対して親権を行う者を親権者といいます。
離婚すると、どれくらい親権者がいるかと言えば、
平成28年の離婚件数は 21 万 2000組
そのうち、未成年の子がいるのは約6割近いの12万5946組
なんですね。
離婚するとなると、たいてい父も母も子供を引きとりたい、と主張しますよね。
よく言えば、親としての責任の自覚があるから。
でも本音のところは、もしかしたら、この先ひとりぼっちになるのが寂しい、ということもあるかもしれませんね。
親権者には、「監護権」と「財産管理権」という責任があるのと同時に、子どもにとってすくすく育つ環境にあるか、というのがもっとも大事なポイントなんですね。
離婚した後の親権者について、わかりやすく説明します。
日本では母親が親権者になる事の方が多い
未成年の子がいる場合には、離婚後の親権者を夫婦のどちらかにするか決めなければ離婚できないことになっているんですね。
でも、親権者を決めるのは、子供の利益と福祉を最優先するのが原則です。
子育てへの意欲・経済力・環境などから総合的に判断します。
ただ、日本では子どもが小さい場合母親が親権者になることがほとんどです。
その小さいっていうのは、小学校の3、4年生くらいまでですね。
平成29年に厚生労働省が調べたデータによれば、離婚件数(平成27年)のうちで、未成年の子がいる家庭は全体の58.4%でした。
そのなかで、妻が親権者になる割合84.3%、夫が親権者になる割合12.1%という結果が出ています。
親権を父か母のどちらかにするかを決めるのは、親の決めたことに子供は従わないといけないんですか?
親権は、一方的に親が決めるのではなくて、小学校高学年くらいになって、自分の考えがはっきり言えるようになればある程度子供の意思が尊重されます!!
中学生くらいからは完全にその子の意志で決まります。
子供がどんな環境で育っていくのかも大事
最近では、「子供の利益と福祉」の観点から、子供の環境が変わらない方がいいという考えがあって、すでに別居していて子育てしていればその方が有利なんですね。
「これから子どもと一緒に暮らす予定」っていうのは、現状が大事なのでダメ、というより弱いですね。
小さい子の親権といえば、ほとんどの人が思い浮かべるように「母親」です。
父親がとれるとしたら、すでに父の実家で祖父母と暮らしているとか、父側が金銭的に問題がなくて、同居して子育てしている(典型例では主夫)とか、そういう場合ですね。
離婚の際に財産や住宅を持っているほうが、子どもの利益と福祉の観点からもいいんじゃないの、っていう考え方もあります。
もし、自宅を所有しているなら、自宅の財産を把握しておくと余裕が持てます。
現在の自宅の価値と住宅ローンの残高はあらかじめ計算しておくと、有利に離婚条件を展開できる可能性があります。
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裁判所の動画もある
離婚に際して、裁判所が離婚した子供のことについて、動画を作成していますね。
Youtubeで
- 「離婚をめぐる争いから子どもを守るために」
- 「子どものための面会交流に向けて」
など、5分程度の動画です。
動画では音声が出てしまうので、文字おこし、というボタンを押せば、文字を見ることができます。
「法律的な意味」の親権者ってどういうこと?
日本以外の先進国(イギリス以外)では、すでに離婚後も両親の共同親権とする「共同親権法制化」が実現していますが、日本では夫か妻のどちらか一方が親権を持つことになります。
日本では、必ず両親の一方だけが親権者となるんですね。
結婚して、共同して親権を行使していたものが、、離婚すると別れて、共同がやめになって、親権者をどちらかに決める、ということです。
(離婚又は認知の場合の親権者)
第819条
- 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
- 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
- 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
- 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
- 第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
- 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる
親権をもつ者は、子どもの生活に関することや財産管理についての権限を持つだけではなく、子どもの法定代理人になります。
これは、親権者でないものは干渉できないことになっています。
法律的にも重要な親権者の決定です。
→離婚で子供の親権はどのように決まるか
親権には身上監護権と財産管理権がある
親権は、法律的には、身上監護権と財産管理権とに分けられます。
身上監護権とは 子供の養育や、身の回りの世話をしたり、しつけ・教育をしたりすることです。
財産管理権とは 子どもに財産があればこれを管理することと、子どもが法律行為をする必要がある場合に子どもに代わってわって契約訴訟などの法律行為をする子どもの法定代理人ことです。
離婚の場合、身上監護権の部分を親権から切り離して、親権者とは別に監護者を定めることもできます。
身上監護権と財産管理権を分けて、親権者は父で、監護権だけ母がとるという方法もあります。
→監護者になって子供と暮らす
でも、裁判所でその2つをを分ける離婚裁判での判決を出すことはないですね。。。。
これはあくまでも子どものための権利で、親のための権利ではないからなんですね。
親権を二つに分けて考えることは合理的なことですが、とくに定めをしない限り両方とも親権者が行使することになります。
親権者と監護者を分けて決めると、親権者は義務感にかられて養育費の支払いをきっちりする、ということもあります。
養育費の支払い義務を守らせる一つの手段として考えることもできます。
親権者の決まり
離婚届には未成年の子の親権者を記載する欄があり、親権者の記載がない場合には離婚届を受け付けられないので、離婚はできないことになります。
つまり、先に夫婦の離婚だけ受け付けて、子の親権者指定を後で決めることができません。
離婚を受理してもらいたいがために、とりあえずどちらかを親権者と記入しておいて、
離婚が成立してから改めて話し合おうと思っても、
離婚届に記載した親権者は戸籍に記載されてしまいます。
親権者を変更するには双方の合意、または家庭裁判所の許可が必要となります。
そう簡単に変更できません。
逆に、子どもの利益のために必要と認められるときには、家庭裁判所では親権者を他の一方の親に変更することができます。
詳しくは→親権者の変更
離婚して親権を夫婦二人がもてない
離婚すると、日本では親権は夫か妻のどちらか一方に決めなければなりません。
離婚届にもどちらが親権者になるか記入する欄があります。
離婚後も、夫婦共有の親権とすることはできません。
親権は父か母のどちらかに100%です。
離婚しても子供の親としての権利は失いたくない、だから『親権は自分に』と夫婦でお互いに思う時もありますよね。
でも、日本では離婚したら、どちらかの親が、親権を100%行使してしまうんです。
どうしても、離婚しても親権を持ちたいけど、夫婦で争いがある場合は、調停や離婚裁判をすることになります。
30歳の夫婦です。
3歳の娘がいます。離婚をすることは決めたのですが、二人とも子供は手放したくはありません。
離婚後も夫婦共有で親権 を持つことはできないのでしょうか。
婚姻中なら親権は夫と妻の両方にありますが、離婚後は親権を共有で持つことはできません。
監護能力などを総合的に考慮しながら、夫か妻のどちらかを話し合いや調停、裁判の中で決めます。
じゃぁ、一度とりあえず親権者を決めて離婚してから、後で変更するってできるんですか?
いったん決めた親権を変更する場合、元配偶者同士の合意だけではできません。
家庭裁判所に親権者変更の調停や審判を申し立てなくてはいけません。
一方のみが変更を望んでいる場合は「最初の親権者の元では子供が健全に養育されない」と判断されるような状況の変化がなければ変更は難しいです。
どうしても親権を取りたい場合のポイント はあるんですか?
離婚するに際して親権を取りたい場合は、とにかく子供と離れないことです。
共有で親権を行使できないので、離婚するときに争いがあれば、家庭裁判所の調停、離婚裁判で決めます。
離婚裁判になると、いま養育されている環境をあえて変えるような判断はなかなかしません。
離婚に向けて別居するにしても、子供を連れて出て、「いま子供は自分のもとで平安にくらしています」という既成事実を作ることが親権を取る上で重要です。
とりあえず早く離婚したいから、親権は後回しにしたい、と考えたくなるのもわかります。
でも、親権の変更はそういった親の安直な考え方に子供がほんろうされないように、とても難しいのです。
後から親権者を変更するには、家庭裁判所の許可が必要になってくるんです。
複数の未成年の子がいる場合
二人以上の未成年の子供がいるときには、それぞれの子について親権を決めなければならないんです。
子供によって親権者を夫と妻に分けることもできるんですが、原則として、一方の親が全員の未成年の子の親権者になるのが望ましいとされているので、3人の子供がいたらまず一緒ですね。
兄弟姉妹が一緒に暮らして育つということは、人格形成に重要だ、と考えられているので、親の都合で子供たちを引き離してはいけないという見解にもとづいているためです。
親権者にならない親にも、被相続権、相続権、扶養義務はあります。
親権者が死亡した場合
離婚の際に決めた親権者が死亡してしまった場合は、もう一方の親が自動的に親権者になるわけではありません。
そのときには後見人が立てられます。
後見人は親権者の遺言にもよるのですが、ない場合は家庭裁判所が決定します。
それまで親権を持っていなかった親が、子どもを引き取る場合に親権者になる可能性はあります。
親権制度の見直し
親権は、現在の日本の民法には「成年に達しない子は、
父母の親権に服する」(民法818条1項)という表現が今も残されていて、
親の子に対しての支配権と誤解されてもいます。
そこで、こういった包括的で広汎な支配的とも思える権利概念は、
権利濫用を招く原因になってしまうとして、国連児童の権利に関する委員会というところでは、日本に懸念を示したりしています。
児童の権利に関する委員会の最終見解 2010年6月
民法において「包括的な支配」の実行の権利を与える「親権」の概念および過剰な親の期待は、
児童を家庭での暴力の危険にさらしているということに引き続き懸念を有している。
委員会は、児童虐待の件数が増加し続けていることに懸念を持って留意する。
日本では、離婚してからは単独親権の選択肢しかないので、父母が親権者と非親権者に分かれます。
このために例えば、非親権者の方の親が子供の学校に行って、学校の情報を得たい、と希望したとしても、親権者ではない、として断られることがあります。
これは、親権者の権限は100、非親権者の権限は0といった、親権を過大視しているからとも言えます。
非親権者の方が子供を監護している親権者や子供への有害な干渉は避けるべきですが、
親権がなければ子供の情報へのアクセス権すら全て奪われるといった現状も好ましくはないです。
かなり前の本で中川善之助の「権力意識からの脱却をめざす親権廃止論(中川善之助「親権廃止論」1959年)」は、
すでに昭和34年の法制審議会民法部会身分法小委員会の仮決定および留保事項に反映されて、
親権概念や制度を廃止する案として(丁案)身上監護権と財産管理権に分ける案と(戊案)後見制度に統一する案が示されていました。
廃止よりも、共同親権の是非も含めて、親権法の再構築をめぐって議論されています。
また、「親権」という用語の是非についても議論が続いています。
今後も子供の方を向いた親権の考え方が導入されることになるかもしれません。
離婚のことで悩んでいたり知りたいことがあれば、まずは家庭裁判所に行くといいです。
もちろん、「離婚できるか、できないか」の判断はしてくれませんが、主に手続き的なことであれば、わかりやすく教えてもらえます。