共同親権は日本では議論されはじめたばかり

共同親権ですべて解決、にはならない


離婚ってどう考えても、親の都合ですよね。

 

家族のなかに子供がいたら離れ離れになってしまうのが離婚です。

 

離婚すると、今の日本の制度では、親が子供を守る権利が「単独親権」なんですね。

 

離婚した両親のどちらかしか親としての権利が行使できない仕組みになっています。

 

離婚するのは仕方ないにしても、子供とってみたら、離婚後も親の権利が変わらない方がいいんじゃない?って思えますよね。

 

親の都合で離婚するなら、せめて子供に影響がないように、と。

 

「共同親権」の制度は、子供の利益にもなって、親も離婚後も親としての自覚を持たせるように、という趣旨で導入をしようとしているところです。

 

2018年になって「単独親権」制度の見直しを検討して、離婚後も双方に親権が残る「共同親権」を選べる制度の導入の本格的な議論がはじめられました。

 

日本以外の外国でも、ほとんどが共同親権の制度があります。

 

でも、共同親権にはメリットばかりではなくデメリットもあるんです。

 

また、離婚する際に問題が出るのは、親権の問題と住まいにもからむ財産の問題も残ってしまうんですね。

 

共同親権について詳しく説明します。

 

 

共同親権とはどういうこと?

 

離婚する前は、それぞれの両親に子供の法定代理権があるわけです。

 

夫婦が結婚している間は、子供の親権はつねに「共同親権者」ってことなんですね。

 

子供の法定代理権って、どんなことがありますか?

法定代理権って範囲が広いんですが、例えば、未成年の子供が高額な買い物をしても、親が取り消すことができる取消権なんかですね。

ほかにも、子供のお金を銀行に貯金しているときに、その通帳を管理しておくことなんかも、法定代理権のうちの一つです。

 

そういった子供に対する親の権利が親権なんですが、日本では、親が離婚したら、父親か母親の「どちらかが」親権を行使しなければならない、って決まっています。
「親権」とは? 離婚したら必ずどちらかの親が親権者になる

 

民法819条が、父母が離婚する場合、どちらかを親権者と定めなければならないと規定しているんですね。

 

(離婚又は認知の場合の親権者)

第819条

1.父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

2.裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

3.4.5.6.(省略)

これが、単独親権と言われる制度なんですね。

 

単独親権にも変遷がある

 

明治29年に制定された民法は、戦後大きく変わったのですが、まだまだ家制度が反映しているところもあるんです。

 

それが、親権が「子どもに対しての支配権」のように誤解されているところです。

 

「支配できる=虐待」それが児童虐待にもなっているとも言われています。

 

親権は平成24年に施行された民法で「子の利益のため」と明記されて改正されました。

 

やっと、子供中心になって考えられてきたところで、共同親権はその流れで、更に法改正する方向になっているわけです。

 

一方で、離婚後も双方に親権が残るのが「共同親権」です。

 

2018年になって、離婚後に「単独親権」制度しか選べない制度の見直しを、政府が検討しているのが今の日本なんですね。

 

「単独親権」と「共同親権」のどちらかを選べる制度を導入しようとしているとのこと。

 

単独親権だと、親権をがなくなった方の親は、子どもと交流する機会が制限されてしまいます。

 

それが「子の利益」にならないケースがあると、専門に研究している人からも指摘が出ているのも理由です。

 

法務省が2020年に海外の24カ国を調査した結果は、日本以外では単独親権しか認めていない国はインドとトルコの2カ国だけでした。

 

欧米では共同親権を採用する国が多いこともあって、離婚後も両親が養育にかかわる共同親権制度に向けて、民法改正の検討を始めた経緯もあるんですね。

 

2018年7月の報道によれば、

法務省は親権制度を見直す民法改正について、2019年にも法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する見通し。

と発表されていました。

 

共同親権のメリットは親としての責任の自覚

共同親権は親としての責任の自覚であること

 

どうして単独親権に加えて、共同親権の制度も選択できるようにしようとしているのか。

 

それは、離婚後も「共同親権」にする目的は、父母ともに子育てに責任を持つこと、なんですね。

 

そのメリットは、親が責任を持つから、離婚後も子どもが心理的・経済的に安定することです。

 

子どもに離婚という事実が与えるさまざまな悪影響が減らせるんでは、ということですね。

 

離婚しても父母が責任をもって争わずに養育することで、子どもは両親がそろった子どもと変わりなく育っていくはず、と。

 

子供の意思に反して、親が離婚という結果になると、単独親権の場合、親権を持たない方は、どうしても「子供への支配が及ばない」って思ってしまうんですよね。

 

さらに、単独親権だと、どうしても「親権がある方が上」みたいな感覚になりがちです。

 

離婚してから面会をするにしても、子供が「一緒に暮らしていない方の親と会いたい」と言っても、親権者が「子供が会いたがっていない」と言えば、それ以上手出しができないわけです。

 

子供のための親権ですけど、親の恣意が入りそうですよね。

実際の離婚後にする子供との面会交流では駆け引きっぽいことがよく起きがちなんですね。

親権者の許可なく会っていたりしたら、誘拐とか犯罪者にされてしまったりする現状もあるんです。

 

そこにつけ込んで、営利目的で子供を連れ去って、親同士の関係を壊して、親子を引き離すといった離婚ビジネスもあったりするんですね。

 

子供の連れ去りは共同親権でなく単独親権だから?

 

単独親権をとりたいがばかりに、強引に連れ去り事件も起きています。

 

離婚裁判などで親権を失った親が、親権を持った片方の親に子を返さないといった事件を聞きますよね。

 

裁判所に訴え出ると、子供を連れ去った方には、強制執行が行われます。

 

よくあるケースですが、実は法律上の明文の規定はないんですね。

 

だから、苦肉の策として、強制執行法上の動産(商品とかの物など)の引き渡し規定が類推適用(同じように扱うということ)されているんです。

 

もし、子供を親権者に返さなかったら、返すまでの間、連れ去った親に毎日一定の制裁金を科す「間接強制」も行われているのが現在です。

 

親子が引き離されると、片親が経済的に困難になってしまうと、子供の貧困問題にもつながっていたりします。

 

親としての責任を持ち続ければ、親子の面会交流も頻繁に行われるし、子どもものびのびと育つだろう、というのが共同親権の趣旨です。

 

共同親権になればメリットとして、親の思いだけで子どもを連れ去り親権を獲得する離婚や、離婚後の負のスパイラルが根絶できるきっかけになるかもしれないですね。

 

共同親権に反対しているのはどうして?

 

親としての自覚を持つことができる共同親権なら、離婚して共同親権にすれば子供にとってメリットだらけに思えますよね。

 

でも、デメリットはあるんです。

 

やはり、離婚はドロドロの憎悪がからむ んです。

 

共同親権を離婚するどんな夫婦にも選択できるようにすると、子供を巻き込んで、かえってややこしくなることも予想されるんですね。

 

子供が手元にいる妻が、夫の側にも親権があったら、親としての権利をガンガン主張してきそうですね。

妻への愛はないけど、子どもは愛している。

 

その子どもが“人質”になって、離婚後も離婚中と同じくらい子供にもよくない影響が出そうですよね。

今の単独親権では90%近くが母親が親権をとるデフォルト状態になっています。

 

だから、離婚前には、夫の側は子どもとの絆が断たれることを恐れて、親権を手放さないようにするために、離婚に同意しなかったりします。

 

共同親権になったら、子供との絆が断たれないかも、という期待はあっても、権利は主張してくるわけです。

 

例えば、子供が離婚前に虐待を受けていたり、夫婦が子育ての方針で対立したりするケースも考えられますよね。

 

そうなると、共同親権を認めたことで「子の利益」を害してしまうことにもなりかねないんですね。

 

共同親権にしたら浮上してきそうな問題点とは?

共同親権制度の課題と問題点

 

今は単独親権の制度しかないので、そのまま共同親権にも適用すると、不具合が起きそうな関連制度がたくさんあるんです。

 

たとえば、

  • 共同親権では「養育費」はどうなる?
  • 共同親権中に「再婚」したらどうなる?
  • 再婚して「養子縁組」になったら親権は誰?
  • 共同親権は「いつから」開始されることになるの?
  • 「離婚届」には共同親権って書かれるの?

などの問題が起きそうです。

 

養育費なんかは、お金を払って、親としての権利があるのに「子供に会えない」といういざこざが、今でさえあるのに、さらにすったもんだしそうです。

 

離婚後に共同親権で再婚したら、養育費に加えてめちゃくちゃになりそうですよね。

 

親権は共同で元夫婦。だけど、片方の親は新しい相手と結婚している・・・

 

すでに共同親権が当たり前の欧米では、共同親権を持つ父母が子どもの意見を聞きつつ、再婚した後にどうやって接するかについて話し合って、親権をどうするか再度、選択するようにしているんですね。

 

政府が考えている案では、そもそも 離婚後の両親の関係が良好である場合を条件とすることで共同親権の選択ができるようにしているようです。

 

離婚したら、子どもは父と母で共同で育てていくのが当たり前ということが、社会に浸透することで、「離婚後の親はひとり」という固定した概念が消えていくかもしれませんね。

 

今の離婚調停で共同親権を主張する?

 

夫婦の話し合いで、離婚について話し合いができないと調停に進みます。

 

その調停で、最後の最後に決まらないのが「親権」をどちらにするか、ということがあります。

 

両方の親が子供を育てたい

 

そう考えているからなんですね。

 

ところが、典型的なパターンでは、男性は日中は仕事をしている、この一言だけで、母親が子どもを虐待しているとか、よほどのことがないかぎり、父親が親権を取れる望みは少ないのが実態なんですね。

 

裁判所の司法統計によれば、離婚調停(または審判事件)で子どもの親権が父親に渡るのは1割以下と出ています。

 

離婚調停で、夫婦に決定的な亀裂がないときに、調停委員になだめられるような形で、もう一度やり直す夫婦もけっこうな数でいるんです。

 

日本では単独親権なので、離婚後はどちらかに親権を決めなければいけない弊害が、共同親権が選べるようになったら、離婚調停でスムーズにすすむかもしれませんね。

 

とはいえ、今現在、共同親権を選択できたら、と思っても、少なくとも、数年はかかります。

 

離婚するときに親権と同じくらい問題になるのが財産のことです。

 

離婚したいと思ったら、ある程度、家にある財産を把握していると、心の余裕を持つことができます。

  • 夫婦の名義の預貯金通帳のコピーや取引明細書
  • 生命保険証書と解約返戻金の証明書
  • 車検証
  • 不動産登記簿
  • 証券会社との取引明細書

など、集められるだけの財産資料を集めることです。

 

もし、住宅ローンがあるマイホームを持っているなら、計算したら大きなお金が入るかもしれません。

住宅ローンがある自宅の財産分与をするための計算方法

 

共同親権(まとめとアドバイス)

 

離婚した後に子供にとってメリットになる面が強調される共同親権の話題ですが、それは話し合うことができる状態がある時だけです。

 

離婚時には精神的にヒステリックになりやすいので、子供と財産の問題は必ず出てきます。

 

共同親権になれば、離婚後の公的な支援も、今の「ひとり親支援」に加えて、さらに充実した支援体制に変わってくるかもしれません。

 

このお金と子供のことを、離婚する前に、しっかりと準備せずに、感情と勢いで離婚してしまうと、あとあと大変になってしまいます。

 

逆に、離婚時には特にお金に関しての条件をしっかり決めさえすれば、離婚後でも生活に困る事はほとんどなくなります。

離婚の条件で後々後悔しないために必ず決める2つのこと

 

 

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